『倉本聰ここにあり!』
やられちゃいました。倉本聰ここにありです。
氏がテレビドラマの脚本はこれが最後と宣言したことや、名優・緒方拳さんの
遺作となったこと、主題歌を唄う平原綾香が女優として好演したことなど
話題にことかかない作品ではありましたが、やはり当然のことながら一番の
ポイントは思わず息を飲んで見入って(聞き入って)しまう優れた脚本でした。
前々昨「優しい時間」はトホホな作品で、ああこの人も終わっちゃったのかなどと
悲しくもなりましたが、その次の「拝啓、父上様」では、さもないともいえる平坦なストーリーを名人の落語のような超一級エンタテインメントに仕立ててしまう“台詞まわし”(なんていう語があるかどうか知りませんが…)の妙技にさすが倉本聰!と唸らされ次作を心待ちにしていました。果たして、その大いなる期待は微塵も裏切られることはありませんでした。抑制の効いた渋い演出や豪華(なだけではない適材適所の配役!)俳優陣の熱演もあり、初回から最終回まで感動させられっぱなしの傑作となっていました。
迫り来る自らの死とどうむきあうか、という極めて重いテーマの物語なのに、全編にわたって漂う、いい意味で“軽い(やさしい?)”空気のようなものがとても素敵でした。
ミーハー野郎と詰られそうですが、久方ぶりの連ドラが始まった山田太一さんも大好きで、そのドラマを見ながらふと思ったのは、「山田太=一愚直なまでの強いメッセージ性」「倉本聰=ディティールの積み重ねで作り上げる唯一無二の空気感・世界観」というそれぞれの強烈な個性です。もちろんどっちが上とか下とかいう話じゃなく、どちらも確立した自分のスタイルを貫いているのが凄いよなあ、と改めて思ったということです。
あれ、なんだか全然「風のガーデン」のレビューになってませんでしたね(笑)。
でもとにかく素晴らしいドラマでした。これで終りなんて言わないで、またすぐ戻ってきてください、倉本さん!